64(ロクヨン)<映画&DVD>に見るミステリーの掟を考える

2週続けてWOWOWで前後編をやっていました。

劇場公開前にJAL国際線の搭乗時に偶然にも「ロクヨン前編」を見てしまったので、いつものように「ミステリーは原作を読んでから映画を観る」ルールを守れなかった作品です。

前編だけではなんともモヤモヤ感が拭えずに原作を読んで結末を知ろうと思ったりしましたが、どうも今ひとつ。
理由はいつものように自分で推理しても犯人像が全然浮かんでこないんです。
謎解きは得意なんですけれどね、誰が本当に怪しいのか見極められず、だから謎解きの正解を急ごうとしなかったのかも知れません。

横山秀夫作品はどの作品もその年のベストセラーにとなるようなヒットを飛ばしています。
その中でも「半落ち」は私自身は映画も本もとても好きな作品です。

さてさて、そんなこんなで一時の熱が冷めてしまった「ロクヨン」ですが、WOWOWで前後編ともに放映されるというのであらためて前後編ともに観たので感想を言わせて貰います。

— ここからはネタバレなのでまだ観ていない人は他のページの記事を読んでくださいませね。

ヴァン・ダインの二十則

アガサ・クリスティーの活躍した1920〜40年代は今のように様々なジャンルの娯楽などは乏しく、ミステリー小説が民衆に認知された娯楽の一つだったのではないかと思います。

その頃の活躍した推理小説家のヴァン・ダインが「ヴァン・ダインの二十則」という推理小説におけるルールなる物を書いてます。
さらにもうひとつ、ロナルド・ノックスの書いた「ノックスの十戒」というのもあって、ミステリー好きの民衆のためにミステリー作品の質を高めるために指針を示してくれているんですね。

ミステリー好きの私としてはこの映画がこの王道のルールに沿わないストーリーであることにやっぱり残念な気持ちになってしまうんです。

「ヴァン・ダインの二十則」

  1. 犯人は物語の中で重要な役を演ずる人物でなくてはならない。最後の章でひょっこり登場した人物に罪を着せるのは、その作者の無能を告白するようなものである。

「ノックスの十戒」

  1. 犯人は物語の当初に登場していなければならない。

このルールですよ。
後編の公開までに前編だけを見てその後、数ヶ月も引っ張って今回やっと観られた後編で初めて出てきた人物が犯人???

前編を見てから何度も自分なりに考えて謎解き楽しみに解決を待ったのが…なんか空しくなりました。 う〜ん、ただ一つの付箋は娘を心配する夫婦の元にかかってきた無言電話でしょうか?

でも、64年というわずか7日間だけしかなかった「昭和」に置き忘れた未解決の少女誘拐殺人事件という横山氏の作り出す設定が実に未練や悔しさを沸き立たせてくれて本当に素晴らしかったです。
このようなどうしようもない背景を混ぜ込んで過ぎてゆく悲しい事件を追いながらやり場のない気持ちを読者や視聴者に共有させて話は進んでいきます。

組織のしがらみ、地方に対する都会の偏見などを絡ませての人間模様はさすがベストセラー作家の作品です。
まぁ、ちょっと皆さん口の利き方は少しお行儀は悪いですけれどね。

ミステリーの掟はもちろん法律ではありませんから、自由に破ってもかまわないものですし、アガサ・クリスティーも「アクロイド殺し」で掟を破りました。
そして「アクロイド殺し」は大ベストセラーになりました!

優等生に正しい順番を守れと言いたいわけじゃないけれど、重要なポジションの登場人物があっと驚くトリックで読者を欺いてくれるのを当たり前に思っているとちょっと肩すかしを食わされるような感じですかね。
ミステリーをメインとしない人間ドラマの映画だったのかも知れませんけど。

(あとになってポスターを見たらちゃんと犯人が写っていました!)

ということで、機会があったら「ロクヨン前後編」を是非ご覧になってくださいませ!

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